自分が今観ているのはシンガーのライヴではなく、女優による演劇ではないだろうか。ERYKAH BADUのステージはそんな錯覚に陥らせる。シンプルだがフェミニンなグリーンのドレスに身を包んだ彼女は、青白いの幻想的な光の中で時に可憐に、時に力強く、時に妖艶に、くるくるとその表情を変えていく。彼女の圧倒的な表現力は、我々をいとも簡単に彼女が創りあげた世界へと連れさらう。ERYKAH自らパーカッション・マシンのパッドを叩くと、会場からどよめきに似た歓声があがった。 ライヴも終盤にさしかかった頃、いたずらな女神はステージを降りて観客席までやってきた。彼女に向かって無数に伸びる手・手・手。セキュリティーの右肩に乗り、華奢な腕を伸ばしてそれに応える彼女の姿に、聖母マリアの姿を重ね合わせてしまった。

SET LIST
○Love of my life
○OTHERSIDE
○DANGER
○ON & ON
○WOO
○I WANT YOU
○APPLETREE
○BAG LADY